嘘をつく 2010.07.12

娘が最近、嘘をつくようになった。

「あすか、幼稚園で泣かなかった?」
「泣いてないよ」
「それは良かった」

幼稚園の一時預かりから自宅に戻って来た娘に向かって、妻がそう尋ねた。

「・・・・」
「ほんとうに泣かなかったの?」
「ううん、泣いてた。ズーッと」


娘は1歳4カ月の頃から自転車で20分ばかり離れた幼稚園で、仕事の忙しい時に一時預かりをしてもらっている。幼稚園の送り迎えは、ほぼ私が2歳8カ月になる娘を自転車に乗せ行っている。


「あすかちゃんが、朝から泣きやまないんで、来てもらえませんでしょうか?」

その日の正午過ぎ、幼稚園の保母さんから電話があった。

『なぜだろう?』

私はその電話を聞いて、直ぐに自転車で幼稚園に向かった。

私が園に着くと、娘は泣き止み、保母さんの横で、保母さんと一緒に給食を食べていた。

「あすかちゃん、やっと泣き止んで、ご飯を食べ始めたところです」


私と娘の目があった。
娘の目が小さく笑っている。

「あすか、泣いたのか?」
「うん」

そう言うと、娘の顔に確かな笑顔がひろがった。


他愛のない大した嘘ではないのだが、最近そうした嘘が娘の口から飛び出すようになってきた。


嘘をつく喜び。
嘘をつき、相手の反応を見る喜び。
嘘をつく自分を、見ている自分を見ている自分。


2歳8カ月の幼心にも、そうした感覚はあるのではないか、と娘を見ていてそう思う。


「嘘はいけない」と私自身も娘に向かっていうのだが、「嘘は、人の心を育む揺りかご」とも言えるのではないか、と思う今日この頃。


娘が泣きつづけ理由は、保母さんの話によると、娘がおもちゃの取り合いで、負け、大声をあげて泣いたため、子供たちが皆驚いて、引いてしまい、孤立したためであった。

さてさて、次の嘘は、どんな嘘になるのか・・・・。